◇日韓友好親善のために◇
国際2001アートフェスティバルに期待する 私は、在日武蔵野美術大学韓国留学生会が主催した「国際2001アートフェスティバル」を後援した。留学生が日本で国際親善と、交流を目的とする展覧会を開いたことに意義を感じたからだ。その展覧会で出会った画家からファックスが届いた。 「申し訳ありません。日本語が完全でないので韓国語で書きます。私は1978年に初めて日本に来て生きてきましたが、未だ日本人は韓国について余りにも分かっておりません。文化のない民族のように思われているようです。私は韓国の歴史、文化、芸術を通じて韓国を知ってもらわなければと責任を感じるようになりました。韓国の美しい姿、芸術精神、文化を正確に伝え認識を正しくして頂くように務めたいのです。正しい価値観と同等なる関係を認識し、維持していくことこそが21世紀の国際化社会に必要な事と感じます。この仕事は誰かがせねばならないことで、今からでもすぐにやらねばならない仕事であります。それがアートフェスティバルを開いた動機であります。」と書いてあった。 昨年3月のことである。第3回光州ビエンナーレを記念して私は光州市立美術館で「河正雄コレクション・在日の人権展ー宋英玉ど良奎そして在日の作家達」を開いた。ビエンナーレの「人間の存在、人権に対する根本的な問いかけをする。」というテーマに呼応し企画したものである。在日の苦難の歴史は人権との闘い、生きた証人であり記録であり人間の尊厳の美しい鏡。それは20世紀へのレクイエム、鎮魂と祈りが込められたヒューマニズムに彩られた世界である。北朝鮮系の作家も含む23名の在日作家達の100余点の展覧会は、今まで人々の意識の外にあった、在日の存在と人権の問題が我が事であることを、切実さを見るものに感じさせたと考える。韓国現代美術史上に於いても戦後55年、この部分がすっぽり抜け落ちており、作家も作品もその中に埋もれていた。 「在日の人権展」は南北の垣根を超え政治の壁を乗り越えた歴史的な意味を持ち、戦後55年の冷遇をはね除け、韓国と日本美術界に省察促す新たな恵みをもたらす、可能性を秘めた展覧会となったと思う。 日本で韓国現代美術を紹介する初めての「韓国現代絵画展」は、1966年東京国立近代美術館で開かれた。私はそこで韓国現代美術に触れたことが韓国と在日作家のコレクションを始める契機を得た。韓国の現代美術は「伝統的」であり「独創的」である。過去から受け継いだ精神的文化的遺産が体質化されているのが特質である。世界の中で自己存在を明確にしており、欧米美術との違いがここにあると思ったからだ。それらの作品を、光州市立美術館河正雄コレクション記念室で常設展示している。 1983年に開かれた埼玉県立近代美術館での「現代・紙の造形展-日本と韓国」展は同質の中の異質(民族的であり伝統的)なものを比較、対比して理解出来た際だった企画展であった。その美術館で新しい世紀を展望し寿ぐ「日韓美術交流展・in埼玉」は我々の前途に希望と福音をもたらしてくれることであろう。アートフェスティバルでそれぞれの「個」を認識し刺激を与え合って友情の輪を広げ、そして我々に新しい連携と協力関係が生まれ増進していくことを切に願う。 |