◇光州で◇

リンクアイコン日記「二つの祖国・二つの故郷 ホームへ

光州市立美術館主催光州(民衆抗争)事件24回周年記念、河正雄コレクション木彫連作版画「花岡ものがたり展」(会期5月11日〜8月25日)を開催している。
「花岡ものがたり」は大館の花岡銅山に中国人(朝鮮人も)が強制連行され、銅山の過酷な労役や事故、一斉蜂起とその後の虐殺、遺体処理と遺骨発掘など一連の出来事を57点の版画に、55編の物語詩に描いたものである。
80年5月18日、私の父母の故郷光州では、民主と人権獲得の為に立ち上がった市民に、国民の生命と財産を守る軍隊が銃と戦車で圧殺した、おぞましい光州事件は韓国現代史の汚点である。
私が育った故郷秋田で起きた、戦時下の花岡事件を題材とした芸術作品を紹介する意義は、薄れ行く両事件の記憶を覚醒し、未来の青少年に学習する機会をもつこと、共通の不条理克服の為に連帯し、絆を深める意味があるからだ。
これらの作品を多くの人達に鑑賞されることは、韓日の美術文化と親善友好、アジアと世界平和に寄与するものである。人権と民主主義を守るために、犠牲になられた御霊を顕彰、感謝し、慰霊することは我々の務めでもあるからだ。
「花岡ものがたり」は人類の尊い遺産である。
 2004年5月10日、「花岡ものがたり展」開幕式に出席するために秋田より「花岡の地・日中不再戦友好碑を守る会」(団長・富樫康雄)の27名の方々が、光州を訪問された。
 一行は翌日、光州民衆抗争事件犠牲者を祀る望月洞の5.18聖地(国立墓地)を参拝、人権と民主主義を守るために戦い、犠牲となった市民達を追悼した。
そして近隣にある詩歌公園を散策し、古の文人達が愛した自然庭園を堪能した。
 午餐会は光州YMCA文化財団、尹壮鉉理事長主催で開かれ、前5.18財団理事長や新聞記者団など光州側からは17名が出席された。
大館市民と光州市民とが交流し友好親善の絆を結ぶ場となった。
午後4時30分、メイン行事である「花岡ものがたり展」の開幕式に臨んだ。テープカットに続いて作品観賞、そして李泰吉美術館長、富樫団長、前5.18財団理事長のスピーチの後に、守る会一同が「花岡ぶし」を合唱した。立食パーティに出席された市民らと交流がなされた和やかな開幕式となった。
 開幕式が終わり、一行は共に美術館脇にある光州文化会館で開かれたわらび座「チェビ・つばめ光州公演」を鑑賞した。
2日前にソウルで5公演を終え、大盛況、大反響の成果を上げての光州公演である。
前日まで客の入りが心配だとも言われていたが、当日は大満員、公演の内容も光州市民に受け入れられたようで安堵した。
一様に涙を流して、感激したとの感想を漏らしていたので光州公演の橋渡しの一端を担った者としては責任を果たした喜びはひとしおであった。
翌日、秋田犬と珍島犬との姉妹提携交流のため、一行らは珍島に向かい光州を後にした。
 富樫団長の光州訪問の感想であるが「5.18、花岡ものがたり、つばめに共通する平和、人権、民主主義、友好交流は"つながり"があると全団員がしっかり確認した。
これぞ現代の民間通信使の役割を果たしたと自負している。」と語って下さった。
ホストの私としては、その言葉を聞いて、ここに至るまでの長かった紆余曲折の道中を振り返り、ホッと一息、肩の荷が下りた思いであった。
韓日の民間文化交流がこのような自然な形で出来るようになったことは喜びである。