◇映画「在日」戦後50年史◇

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社会派の在日二世映画監督の呉徳洙氏が、戦後五〇年の在日の歩みを映画にするという朝日新聞の記事を読んだのは、三月二日のことであった。
 私と同郷の秋田県鹿角市の出身、同世代の方であることだけは知っていた。 八〇年代のことである。監督の制作された「指紋押捺拒否T」の完成上映会があるというのでかけつけたことがある。その時、受付にいた呉さんとあいさつを交わしたが、数十秒のことであった。その時、眼がやさしい方だなあという印象をもった。
 社会性の強い地味で重いテーマの映画を撮って採算があうのだろうかと勝手な心配をしたことを覚えているだけの出会いで、その後ご縁がなかった。

 今年七月下旬のこと、突然呉さんから電話があった。私の家へ遊びにいきたいというのである。あまりのなつかしさに、受話器を通して、秋田のことや昔話に話がはずんだ。                数日して我が家を訪ねられた呉監督と再会を喜びあった。話題は、七月から撮っている映画のことであった。
 映画「戦後在日五十年史」制作の意図について語る呉監督のやさしい眼に厳しい光があった。
「一九四五年八月一五日、解放された多くの朝鮮人は、祖国・郷里に向け帰っていった。そんな中、さまざまな理由で帰国を断念した在日≠ヘ、戦後五〇年、いま日本社会で生きつづけ、現在もその中にある。日本による植民地支配から数えて一世紀近く、解放から数えて半世紀もの歳月が流れようとしている。当然世代交代は進み、祖国体験をもつ一世の人口は一〇パーセントを切ったときく。もはや、歴史≠ニして語られるものもあろう。その長い歴史の中で、在日≠ヘ政治的・運動的・民生的にさまざまな出来事や事件を体験してきた。
 この戦後史流れを縦軸≠ノし、その歴史を懸命に生きてきた在日≠フ庶民・家族の生きざまを横軸≠ノして映像ドキュメントすることにより、過去から現在、そして在日≠フ未来を志向しうる作品としたい。と同時に次世代にも継承しうる作品をめざしたい。」いつか誰かがやらなければならなかった、いつか誰かが描かねばならない、

「戦後在日五〇年史」という大きなテーマに真っ正面から立ち向かおうとする呉監督の情熱が惻々と伝わってきた。そして何よりも、呉さんのあたたかい人柄、在日にこだわるあつい志に強い感銘をうけた。

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